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デジタル化により、あらゆる生活情報が収集可能。だからこそデータ分析の出番。【マーケティングリサーチとデータ分析の基本 -中野 崇- 】

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2018年4月に発行された、中野崇氏著の【マーケティングリサーチとデータ分析の基本】を読んで学んだことをまとめています。

 

マーケティングリサーチとデータ分析の基本

マーケティングリサーチとデータ分析の基本

 

 

本書では、多様化する現代において、自身の経験則や成功パターンが通用しない現実がある、と書かれています。多様化していく中で、経験や成功体験に頼りすぎず、日常的に利用されている大量のデータを活用することが大事であり、そのためのリサーチ方法やデータ分析の仕方などがわかりやすくまとめられています。

 

マーケティングリサーチとデータ分析の基本」から得られる知識

1.経験則だけじゃどうにもならない。多様化する社会ではデータ分析が効果的。

2.マーケティングは経営そのもの。リサーチや分析を成功に導く4つの基礎力。

3.効果的で効率的。リサーチ成功の7ステップ。

 

リサーチやデータ分析はポイントを押さえれば誰でもできる。

中野崇 マーケティングリサーチとデータ分析の基本

   

 

1.経験則だけじゃどうにもならない。多様化する社会ではデータ分析が効果的。

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価値観やライフスタイルは年々多様化しており、今までの経験が通用しない時代になっています。また、スマホやIoT(Internet of Things)、電子マネーの普及により、あらゆる活動がデータとして蓄積される時代になっています。つまり、今までの経験に頼りすぎるのではなく、日々蓄積されるデータを活用することが重要です。

 

経験じゃ捉えきれない多様化。なりたい職業はYouTuberで、外客数は2倍増。

2012年より政府が「ダイバーシティー経営企業100選」を実施するなど、女性活躍推進、外国籍従業員の増加、シニア層の再雇用、など多様性(ダイバーシティー)の重要性が、国家レベルで注目されています。リモートワークやパラレルキャリア(現在の仕事以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加すること)など、多様化は加速度的に進んでいます。

YouTuberになりたい男子中学生

ソニー生命保険が2017年4月に公開した「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」で、「男子中学生が将来なりたい職業」第3位はYouTuberでした。今まで存在もしなかった職業が、今では憧れの職業です。これは、

自己実現重視という価値観が社会的に受け入れられるようになってきたからだと考えられます。

物質的な豊かさの追求という価値観から、自分らしさの追求という価値観に変わりつつあるといえます。

外客数が3年間で2倍増

日本政府観光局(JNTO)の調査によると、2013年は年間10,363,904人だった外客数が2016年は年間24,039,700人と、2倍以上になっています。

海外の方は、ファッションスタイルや自己主張の方法、挨拶やマナーなどさまざまな点が日本人とは違います。外客数の増加により、

異文化や多様な価値観を身近に感じられるようになっています。

異文化や自分とは異なる価値観と触れることで、固定概念に縛られる必要はない、と強く思うようになり、多様化が促進されます。

 

 

政府による多様性の促進、外客数の増加による異文化への関わりの増加、社会的な価値観の変化、こうしたことが重なり、世の中に多様な価値観が存在できるようになり、多様なニーズが生まれています。

マーケターは多様化した価値観に基づくそれぞれのライフスタイルを理解し、効果的なアクションを考えなければなりませんが、
YouTuberになりたい男子中学生の気持ちを、自分の経験則から読み解くことは困難です。
もはや自身の経験則や成功パターンは、ほとんど通用しなくなっているのです。


Point
加速する多様化には、経験だけでは太刀打ちできない。

 

 

多様化する時代にはデータ有効。あらゆる活動がデータに蓄積されていく。

2005年~2014年の9年間でデータ流通量は、約1.6エクサバイトから約14.5エクサバイトへと、約9.3倍にも増えており、あらゆる活動がデータとして蓄積されている事実があります。(1エクサバイト=1兆メガバイト

買い方の変化により、データ化される購買履歴

実店舗での購入だけではなく、amazonなどのEC(electronic commerce = インターネット上でものやサービスを売買すること全般のこと。)が当たり前になり、決済手段電子マネーの利用が増えているため、

あらゆる購買履歴がデータ化されています。

IoTやスマートデバイスの普及により、データ化される行動情報

スマートデバイスの普及、それに伴うSNSの普及により、いつ、どこで、何をしたか、すべてのライフログ(生活の記録)が取得可能になりました。

また、IoT(Internet of Things = あらゆるモノがネットにつながる仕組み。モノにまつわる情報の取得や操作が可能。)の普及は今後益々増えることが考えられますから、ありとあらゆるデータが取得可能となっていきます。つまり、

生活のありとあらゆる行動情報が、データとして取得可能になります。

 

 

といっても、人々の価値観やライフスタイルはそんなに単純ではないので、ログデータだけで全てを理解することは難しいです。それでも、
今までに比べて、生活行動が圧倒的にデータ化されている。
このことは間違いありません。


Point
ありとあらゆる生活行動がデータ化されている。

 

 

2.マーケティングは経営そのもの。リサーチや分析を成功に導く4つの基礎力。

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マーケティングリサーチとは、ビジネス課題を解決するためのあらゆる情報収集や分析のことです。マーケティングリサーチには具体的にどのように行い、どのような効果が期待できるのかについて、まとめていきます。

 

リサーチやデータ分析を成功に導く4つの基礎力。

売上の不調原因の把握や、広告の貢献度の可視化など、リサーチやデータ分析はさまざまなシーンで必要となります。効果的に行うためには4つのスキルが必要とされています。

情報収集力

さまざまな情報ソースやリサーチ手法を知り、目的・必要に応じて使い分け、情報を収集する力です。 

情報分析力

収集した情報を適切に加工・分析し、ビジネスの意志決定につながる情報へ変換する力です。

情報解釈力

収集、分析した情報を正しく、そして意味ある形で解釈する力です。

情報活用力

分析・解釈した情報をビジネスの意思決定やアクションにつなげる力です。

 

 

マネジメントの発明者と呼ばれるドラッカーの、マーケティングの定義を講義に解釈すると、マーケティングは顧客起点で推進するビジネス活動全体」となります。営業にとってのクライアント、人事にとっての従業員のように、すべての業務には必ず顧客がいるので、
マーケティングは経営そのものと解釈できます。
情報を集め分析し、適した形に解釈してアクションにつなげていきましょう。

Point
マーケティングは経営そのもの。

 

リサーチの意義とは成功確率を上げること。

リサーチはあくまでも判断材料の一つですが、過去の成功体験が通用しなくなっている昨今において、客観的な数字や情報を活用することが成功の確率を上げる方法です。

 

リサーチを実施するメリット

ライフログなどから様々な行動情報が収集され、購買行動などの数値や、アンケートから読み取れる感情などが可視化されたことで、今まで以上にデータを活用して意思決定することが重要になっています。リサーチを行う主なメリットは以下の通りです。

客観的な数値で議論が可能。
憶測ではなく事実で議論できるため、建設的な議論ができます。

思いがけない発見がある。
作り手側が気づかないニーズや、アイデアが得られます。

 


逆にリサーチをしない場合は、客観性に欠け、自身の経験からのみ考え、実際に起きている変化に気づき辛い、というデメリットがあります。つまりリサーチをしないと成功の確率が下がってしまうのです。
リサーチで課題を明確にし、意思決定につなげることが、成功確率を上げます。
リサーチをすることでニーズを見つけ出すことができます。あとはそれを解決するだけです。

 

Point
リサーチで成功確率は上がる。

 

 

3.効果的で効率的。リサーチ成功の7ステップ。

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データ収集の前段階から分析結果をアクションにつなげることまでを含めたプロセスがリサーチです。リサーチが成功するかどうかは以下の7ステップにかかっています。

ステップ1. 課題解決のインパクトが大きいものが優先。リサーチの順番。

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リサーチの必要性が発生する際、対象が複数になることがあります。こうした場合はリサーチの順番に気を配らなければなりません。

 

ビジネスインパクトの大きいものから

売上が不調である2つの商品があったとします。どちらからリサーチするのがいいでしょうか?

A:売上200億/作対(昨年との比較)95%

B:売上50億/作対70%

この場合はBのリサーチを優先的に始める方がいいです。売上減少額はAが約10億なのに対して、Bは約21.5億です。つまりビジネスインパクトはBの方が圧倒的に大きいため、Bのリサーチを優先すべきと判明します。このように、

課題解決のインパクトが大きいものからリサーチを着手することが重要です。

ついつい分析しやすいものや、先に指示されたものから着手してしまいがちですが、ビジネスインパクトの大きいものから着手するようにしましょう。

 

ステップ2. アクションにつながらなければ意味がない。目的の明確化と仮説構築。

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なんのためにリサーチを行うのか、目的を明確にし、調査課題に対する仮の答え(仮説)を考えることが重要です。

 

リサーチはアクションや意思決定につながらないと意味がない

リサーチの定義は、「ビジネス課題を明確にし、課題解決のアクションや意思決定のために必要な情報収集や分析」なので、アクションや意思決定につながらなければ意味がありません。リサーチ目的が明確になっていれば、

どんな情報を収集・分析すればよいか=リサーチの範囲が定まります。

たくさんの情報を集めることが目的ではなく、課題解決につながる情報を集め、分析し、アクションや意思決定につなげることが重要です。

 

仮説なき調査は失敗する

仮説がないと、調査項目が膨れ上がり、調査コストと労力が増大します。仮説があると、課題の焦点を絞り込め、アクションに直結した結果が得られやすくなります

さまざまな可能性を考慮して仮説を深めることが重要です。どの仮説が正しそうなのかは、リサーチで検証すればよいのです。

仮説を構築したら、調査項目に落とし込みましょう。その際は、

何を聞けば仮説を検証できるか?ということを丁寧に考えてください。

そうすることで、アクションに直結する調査ができるようになります。

 

ステップ3. 3C、SWOTフル活用。リサーチ範囲を明確にする調査企画設定。

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目的を達成するために必要なリサーチの要素を考えて整理することを「調査企画を設計する」といいます。必要なリサーチの範囲を明確にしていくステップです。

 

フレームワークを活用して、リサーチ範囲の明確化

例えばある市場に参入可能かどうかを調べて欲しいと言われても、市場規模を把握したいのか、競合他社の戦略を把握したいのか、ニーズを幅広く把握したいのか、全てを網羅的に把握したいのか、と様々です。

全てをリサーチするというのは時間的にも費用的にも現実的ではありません。したがって、

3C分析やSWOT分析といった、フレームワークを活用して選択範囲を絞りましょう。

リサーチに効果的なフレームワークを紹介します

2つ合わせるとよりパワフル。3C分析とSWOT分析

3C分析にSWOT分析の視点を盛り込むと、より抜け漏れのないパワフルな分析が可能となります。

3C分析

事業環境分析を、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)、3つのそれぞれの立場に立って、市場の機会と脅威を洗い出すアプローチです。

順番としては、まず自社を分析してから、他の項目を分析するのがいいかと思います。

3C分析について詳しく知りたい方はこちらのサイトでとてもよくまとめられています。

SWOT分析

経営戦略や事業戦略を検討する際に、内部要因と外部要因の視点から、事業環境分析を行う手法です。

Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字をとって、SWOT分析と呼ばれています。

SWOT分析について詳しく知りたい方はこちらのサイトでとてもよくまとめられています。

 

他にもある。調査企画設定を助けるフレームワーク

3C分析、SWOT分析の他にも役立つフレームワークがいくつかあります。

STP分析

事業戦略やマーケティング戦略を策定するために活用されるフレームワークです。市場における自社(自分)の競争優位性を獲得するために重要な分析です。

Segmentation(セグメンテーション=市場の細分化)、Targeting(ターゲティング=ターゲットの抽出)、Positioning(ポジショニング=競合との差別化)、の頭文字をとって、STP分析と呼ばれています。

STP分析について詳しく知りたい方はこちらのサイトでとてもよくまとめられています。

4Pと4C

4Pとは企業側の視点に立ったマーケティング施策の構成要素の考え方です。Product(製品戦略)、Price(価格戦略)、Place(流通・チャネル戦略)、Promotion(販促・コミュニケーション戦略)、の4つを指します。

4Cとは消費者の視点に立ったマーケティングの構成要素の考え方です。4Pを補完する概念として提唱されました。Customer Value(顧客価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)、の4つを指します。

4Pと4Cについて詳しく知りたい方はこちらのサイトでとてもよくまとめられています。

 

 

これらのフレームワークマーケティングプロセスの流れに位置づけます。

事業環境分析は3C分析とSWOT分析を活用。

市場選定はSTP分析を活用。

マーケティング施策の策定に4Pと4Cを活用。

アクション実行。

結果から効果測定。

となります。この位置付けを理解した上で、

最終的にどのような意思決定やアクションをしたいのか。そのために必要な情報は何か。

という観点でリサーチ範囲を絞り込んでいくことが重要です。

 

ステップ4. 使い分けが大事。調査手法の選択。

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リサーチ目的と範囲が確定したら、調査方法を具体的に考えていきます。

 

まずは広く浅く。デスクリサーチ。

Googleなどの検索エンジンを使った情報収集は、「デスクリサーチ」といわれる伝統的な調査方法です。広く浅く情報を収集できる特徴があります。

注意しなければならないのは、「検索上位=正しい情報」とは限らないことです。SEM(Search Engine Marketing=Googleなどの検索エンジンを利用して展開されるマーケティング手法)、SEO(Search Engine Optimization=サイトが検索結果でより上位に表示されるために行う最適化施策のこと)が当たり前になっており、検索上位=SEMSEOに力をいれているサイトという構造になっているからです。

検索で手軽に得られた数字のみで側面的に判断するのは危険です。

誤った情報を掴まないように、押さえておくべきポイントが3つあります。

1. デスクリサーチの目的を明確化

これはデスクリサーチのみではなく、リサーチ全部に言えることです。

2. 5W1Hをチェック

5W1Hの観点でまとめることで、活用すべき情報かどうかの判断ができるようになります。

What:収集されている内容

Whom:誰を対象にして収集したか

Who:誰が収集したか

Why:何の目的で収集されたか

When:収集された時期

How:どんな方法で収集されたか

比較する複数の情報があった場合も、5W1Hでそれぞれまとめることで、自分たちの目的にとって有効な情報はどれなのかを判断できるようになります。

3. 信頼できる情報ソースを押さえておく

信頼できる情報が確認できる場所(サイトなど)を予め把握しておくことも重要です。無料で利用できる情報ソースは多々ありますが、その中のいくつかを紹介します。

民間企業が公表している情報:生活定点

政府が公表している情報:景気統計

有料のものも多々ありますので、自身の目的に適しているソースを探してみるのもいいかと思います。

 

 

デスクリサーチだけでも十分な情報収集は可能です。しかし、

ピンポイントで情報が欲しい場合は、別の調査方法を活用する必要があります。

デスクリサーチはあくまで簡易的な調査ですので、さらに詳しく調べる際には、次から紹介する方法を活用していきましょう。 

 

 

数値は嘘をつかない。インターネットリサーチ。(定量調査)

インターネットリサーチは定量調査になります。(定量調査とは、傾向・割合・ボリュームなど調査結果が「数値」で表される調査を指します。)

協力してくれる調査会員にシステムで調査依頼を送り、PCやスマホなどインターネット上で回答してもらう手法です。

調査の性質上、調査会社の協力が必要なケースがほとんどです。そのため、

調査に必要な基本情報を「調査企画書」に落とし込まなければなりません。

調査企画書の項目について、8つのポイントを簡単にまとめていきます。

1.調査背景

どのような課題から調査を行おうとしているのか、調査結果からどのようなアクションを起こしたいか、を確認する項目です。

2.調査目的

調査を通じて、把握・検証・確認したいこと、を確認する項目です。

3.調査地域

全国や関東など、どこの地域で調査を行いたいか、を確認する項目です。

4.調査対象者

対象者条件を決定する際には、7つの視点から考えることが重要です。

1.属性情報

地域、性別、年齢、職業、年収など。

2.行動・態度履歴情報

商品/サービスに対する認知、利用、利用中止、非利用など。

3.心理的情報

価値観、ライフスタイル、趣味・趣向など。

4.必要なサンプル数は確保できるか

対象者の条件が細かくなるほど、回答者数の絶対数は少なくなります。

必要なサンプル数が確保できるバランスを考えて、対象者の条件を決めましょう。

5.マーケティング施策に落とし込める条件か

対象者を細かく設定するというのは、少数派の意見を参考にするということになります。少数派の意見でも十分なことはありますが、少数派のためだけにマーケティング施策を行えるかといったら、難しいところがあります。

条件を絞りすぎて、少数派の意見ばかりにならないように気をつけましょう。

6.調査目的と合致しているか

調査対象者の検討中、つい自分たちが理想とする条件をすべて満たすターゲットを探したくなりますが、本当にそのターゲットだけが調査目的にとって重要なのかどうかを再度確認しましょう。

意識しないうちに必要なターゲットを除外してしまっているかもしれません。

7.調査後に比較したい軸で比較可能か

何と何を比較するのか、というのはデータ分析のポイントです。

地域によって差がある、購入者・非購入者で接触している広告に差がある、という発見は比較することが前提となっています。

比較可能な対象者設定をあらかじめ考慮しておくことが重要です。

5.回答者数と割付設定

調査対象者の条件毎に、どのくらいの回答者数が必要か決めることを、「割付設定」といいます。よく使われる割付方法は「均等割付」と「母集団構成比に合わせた割付」の2つですが、ここではより効果的といわれている「母集団構成比に合わせた割付」について紹介します。

 

母集団構成比に合わせた割付

均等割付が、男性100人・女性100人というように、回答者数を均等に集めるのに対し、母集団構成比に合わせた割付では、それぞれで必要な回答者数が変わってきます。

ではどのように回答者数を決定するのかというと、「標本誤差」を考慮して決めていきます。

「標本誤差」とは、母集団から一部の標本を抽出して行う調査を行なった際に生じる、標本値と母集団値との差のことです。

例えば、「日本の全女性」を母集団とします。日本の女性全てに調査することは現実的ではないので、「一部の女性」を対象にすることになります。この「一部の女性」が標本となります。

調査の結果「一部の女性(標本)」の回答と「日本の全女性(母集団)」の回答には少々の「差」が生じるとされています。この「差」が標本誤差です。

この標本誤差は次の計算式で出すことができます。

1.96√p(1-p)/n

1.96は信頼度95%の係数

pは質問に対する回答比率

nはサンプル数(標本数=回答者数)

です。

ですが、そんな計算をしなくても「標本誤差早見表」で簡単に確認することができます。こちらのネットリサーチ会社さんのサイトにて標本誤差早見表と、その見方が紹介されています。

回答者数を決定する際は、標本誤差早見表を参照しながら、どの範囲の誤差まで許容できるかを考えて決定するようにしてください。

6.調査手法の選択

調査手法は、調査対象者との親和性・調査目的・コスト・スケジュールなどを考慮して選択します。

高齢者が対象であれば、電話調査の方が適していますし、若年層が対象であれば、インターネットを利用した方が効果的です。

7.調査項目

調査項目とは、アンケート(調査票)として回答者に送られる質問項目のことです。調査目的によって調査項目は変わるのですが、考え方をまとめると以下のようになります。

1.調査目的に合致した項目を設定

この項目は本当に必要なのか。調査目的にかなっているか。を常にチェックしてください。

2.分析の視点を組み入れる

分析の基本は「何と何を比較するか」ということです。たとえば、「利用時間が長い方が満足度が上がるのでは」という分析をしたければ、利用開始時期や満足度の項目を用意する必要があります。

3.消費者の購買プロセスに関するメンタルモデルを参考にする

消費者の購買行動を把握するためのメンタルモデルから調査項目を導き出すことも有効です。(メンタルモデルとは認知心理学用語のひとつです。人が持つ、なにかしらのものごとや人に対して持っているイメージ、モデルのことを意味します。)

つまり、購買行動のメンタルモデルとは、「人が何かを購買するときには、大体このようなプロセスが発生する」という考えです。代表的なものには、

AIDMA(アイドマ)
Attention=認知、Interest=興味関心、Desire=欲求、Memory=記憶、Action=購買

AISCEAS(アイシーズ or アイセアス)
Attention=認知、Interest=興味関心、Search=検索、Comparison=比較、Examination=検討、Action=購買、Share=共有

などがあります。例としてAISCEASを参考にして調査項目を決める場合は以下のようになります。

A(認知):〇〇を何からしりましたか?

I(興味):〇〇に興味を持ちましたか?

S(検索):〇〇に関して情報検索をしましたか?

C(比較):他にどのようなものと比較しましたか?

E(検討):検討する際にどのような点を重視しましたか?

A(購買):購入した理由はなんですか?

S(共有):〇〇を友人や知人に薦める可能性はどれくらいありますか?

このように、購買行動のメンタルモデルに則して調査項目を考えることで、ターゲット層の購買プロセスを網羅的に把握することができます。

8.調査時期

調査時期を考える際には、意思決定やアクションに反映できるタイミングか、季節要因は考慮されているか。に注意しましょう。

調査をして有意義な結果が得られたとしても、マーケティングプランに反映させる時間がない、となってしまっては意味がありません。調査時期を考える際は、意思決定プロセスまでを考慮したスケジューリングが重要になります。

また、季節によって回答結果が異なる可能性もあります。夏場はアイスを食べる人が増えることが予想されるなど、商品やサービスによってさまざまな季節要因があることを踏まえて、適切な調査時期を検討しましょう。

 

 

以上8つのポイントが重要となります。実際にインターネットリサーチをする際は、調査会社に依頼するか、自分たちでセルフリサーチをするかの2パターンあります。

無料で利用できるセルフリサーチツールを紹介します。

定量調査:Questant

調査会社に頼むにせよ、自分で行うにせよ、

有意義な調査を実施するには、発注者側による調査企画書の作成が必須です。
調査のポイントを的確に押さえ、有意義な調査を行いましょう。

 

 

誰にも加工されていない価値ある情報。インタビュー調査。(定性調査)

インタビュー調査は定量調査になります。(定性調査とは、対象者から発せられる生の言葉や行動、見たままの印象など、数値化できないデータの収集を目的とした調査方法です。)主にアイデアや仮説の発見に活用されます。

クライアントに実施するヒアリングや、雑誌のインタビュー記事などが該当します。

インタビューを通して得られる情報は、

誰かに加工されたものではなく、まさにその場で生成される情報(一次情報)です。

なので、着色されていない非常に価値が高い情報を獲得できます。インタビュー調査には2つの手法があります。

1. FGI(Focus Group Interview=グループインタビュー)

6人前後の対象者を集めて、設定したテーマについて自由に話し合いをしてもらう手法です。参加者それぞれの発言がお互いに影響を与え、幅広い意見や、アイデアを収集することができます。

2. Depth Interview=デプスインタビュー

対象者とインタビュアーが1対1で対話する手法です。1つのテーマをより深く聴取できるのと、信頼関係の構築が上手にできれば、デリケートなテーマでも本音を引き出すことができます。

グループがいいのか、1対1がいいのか、調査の目的に合う手法を選びましょう。

インタビューの成功には4つのポイントを意識することが重要です。

 

1.インタビュー企画書の作成

インターネットリサーチと同様に企画書を作成します。考える項目はインターネットリサーチとほぼ一緒なので説明は省きますが、一点重要な部分があります。それは、誰に話を聞くべきなのか。ということです。

インタビュー調査は量的な検証ではなく、新しいアイデアや発見をすることが目的なので、インタービュー対象者を選ぶ際は、次の点に気をつけます。

テーマへの興味・関心が高い人

思考力が高く、物事を多面的に見ている人

いろいろなアイデアを持っている人

意見を発信することに抵抗がない人

テーマに関心がない方のに話を聞いても意味はありませんし、あまりにも偏った考え方をしている方だと、極端に少数派の意見になってしまいます。少ない人数に聞くからこそ、インタビュー対象者の選定には気を配りましょう。

 

2.インタビューの依頼

対象者の目星がついたら、当然ですが依頼を出します。この際、気をつけるべきポイントは2つです。

1.対象者自信を調査しておく

対象者に時間を割いてもらっている、ということを忘れてはいけません。前もって対象者について調べておけば、自己紹介や基本情報の確認に時間が取られることがなくなります。

また、インタビュアーが事前に色々と調べていることが対象者に理解されると、好印象を抱いてもらいやすくなります。良好な関係性構築のためにも、事前調査はしっかりとやりましょう。

2.事前にインタビュー実施に関する基本情報を正確に伝える

インタビューの日時、場所、目的、内容、同席人数、謝礼金額、などを事前に正確に伝えましょう。当たり前のことをしっかりすることで、対象者との信頼関係が構築されます

 

インタビューでは相手との信頼関係が非常に重要です。そのため、インタビューを成功させるには、良いラポール形成が必要です。(ラポールとはフランス語で架け橋の意味。相手との良好な関係性という意味として臨床心理などで使われる言葉。)

 

3.インタビュースキル

企画書通りに情報を聞き出せるかは、6つの要素からなるインタビュースキルで決まります。

1.対象への知識・理解

相手への理解だけでなく、該当テーマへの知識、業界の動向、人間の行動特性、などの知識、知見がないと、良い質問はできません。

付け焼き刃でもかまわないので、必要となるであろう知識を事前にリサーチしてから、インタビューに臨みましょう。

2.第一印象

短い時間で情報を聞き出さなければならないインタビューでは、第一印象は非常に重要です。

心理学者のレナード・ズーニンが発見した、「ズーニンの法則」によると、「物事は最初の4分間が決め手になる」と提唱されており、これは第一印象にも当てはまると言われています。つまり、出会ってから4分で第一印象は決まってしまうのです。

また、心理学者のアルバート・メラビアンが行なった実験によると「コミュニケーションで相手に与える印象は、言語情報・聴覚情報・視覚情報で矛盾があった場合、話の内容(言語情報)7%、話し方(聴覚情報)38%、表情(視覚情報)55%である。」という結果があります。

3つの情報で矛盾がある状態とは、たとえば、自信のない表情(視覚情報)で「自信があります」(聴覚情報)と相手に伝えた場合、自信がないという印象が55%受け取られ、自信があるという印象は38%受け取られるということになります。自信があると伝えているにも関わらず、「自信がない」という印象を与えることになります

2つの結果をまとめると、明るい表情と口調で4分間コミュニケーションをする、ことで、良い第一印象を与えられる可能性が上がります。

出会っていきなり本題に入ってしまうと、険しい表情や口調になってしまうケースがありますので、最初の4分間は雑談をして、第一印象を良くすることに専念したほうが良いかと思います。

 

3.姿勢

インタビューの姿勢として重要な点が4つあります。

感謝

時間を割いてくれていること、意見を教えてくれていることへの感謝の気持ちを持ちましょう。

信頼

相手の話を否定せず、正しいと考えて聞きましょう。

真摯

相手の話を100%理解しようと努めましょう。

共感

相手の立場になって考えましょう。

インタビューはコミュニケーションそのものです。コミュニケーションで大切なのは、相手に感謝しながら、相手を信頼し、相手の話を真摯に話を聞き、共感を持って応えることです。

感謝、信頼、真摯、共感という4つの姿勢を持って、インタビューをしていきましょう。

 

4.聴く力

相手の話にしっかりと耳を傾けることは、非常に重要です。上手に聴くことができれば、対象者は気分が良くなり、普段よりも積極的に話してくれます。

そのためにも、傾聴の「あいうえお」を実践すると効果的です。

あ:相手の目を見て

い:一生懸命に

う:うなずきながら

え:笑顔で

お:終わりまで(オウム返しの場合もあります。)

傾聴の「あいうえを」を心がけて、上手に相手の話を引き出しましょう。

 

5.質問する力

しっかりと聴くためには、上手に質問することが大事です。ここでは質問の内容ではなく、質問の仕方について、代表的なものをまとめていきます。

Open Question(オープンクエスチョン)

「〇〇についてどう思います?」のように、制限を設けずに、相手が自由に発言できる質問の仕方です。相手に自由な発想を促し、幅広い意見を集められます。

Closed Question(クローズドクエスチョン)

「AとBどっちがいいですか?」のように、択一で答えさせる質問の仕方です。相手の考えや意見を明確にしたい場面で有効です。

チャンクアップ

「なぜ〇〇したいんですか?」のように、理由を問うことで、視点を上にあげる質問の仕方です。視点を上げることで、より本質的な課題を発見することができます。

チャンクダウン

「〇〇とはどういうことですか?」のように、思考を掘り下げることで、より具体的にする質問の仕方です。課題や意見の本質が明確になります。

スライドアウト

「ところで〇〇はどうですか?」のように、思考の幅を広げる質問の仕方です。チャンクアップやチャンクダウンと合わせて活用することで、幅広い意見を柔軟に聴くことができます。

それぞれメリット・デメリットがありますので、シーンや目的に合わせて使い分けていきましょう。

 

6.クロージング

クロージングとは、インタビュー全体を終了させる、ということではなく、1つ1つの質問に対しての反応のことです。

インタビューで起きがちなのが、質問のしっぱなし、です。1つ1つの質問に対して、「ありがとうございます」や、「なるほど」のような、クロージング(質問に対する反応)を忘れないようにしましょう。

 

以上の6点がインタビュースキルとして重要なものです。これらを意識して、対象者との信頼関係を上手に構築していきましょう。

 

4.フォローアップ

フォローアップとは、インタビュー内容を、インタビュー終了後にどのように活用したか、を対象者にフィードバックすることです。

貴重な時間を割いてもらい、様々な意見を出してくれた方に対して、フィードバックをすることは最低限のマナーです。

また、丁寧なフォローアップは、強固な信頼関係につながりますので、しっかりとフィードバックを行うようにしましょう。

 

以上4つのポイントが重要となります。

インタビューリサーチは定性調査の1つです。インタビューは直接的なやりとりが必要となるので、オンラインで気軽にというのはなかなかありませんが、そんな中でも無料で利用できるセルフリサーチツールがありますので、紹介します。

定性調査:ミルトーク

インタビューリサーチでは「相手との信頼関係」が非常に重要です。傾聴の「あいうえお」などを駆使して、

強固な信頼関係を構築していきましょう。
そうすれば、上手に本音を引き出せるようになります。

 

 

ステップ5. アクションにつなげることが最重要。分析と解釈。

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収集したデータの分析と解釈について、絶対に押さえるべき5つのポイントがあります。

 

1.分析目的の明確化

分析の際にも、何を明らかにして、どのようなアクションにつなげたいか。という分析目的を明確にすることが重要です。

分析目的によって、データのどこに注目するのか、データからどんなことに気付けるのか、という点が異なるということを認識しましょう。

 

2.比較軸を考える

分析視点で最も重要なのは、何と何を比較するか、を決めることです。情報が増え、比較可能な視点が増えるほど、分析の精度が高まります

比較の視点は無数にありますが、一般化すると、項目比較、全体と部分の比較、時系列比較の3つに整理することができます。

項目比較

性別、年代、といったような、項目間で比較する方法です。例として、購買プロセスのメンタルモデルである、AISCEASの項目を、ある商品の購買プロセスのリサーチ結果からどのような分析ができるのかをみていきます。

A(Attention/認知):80%

I(Interest/興味):50%

S(Search/検索):40%

C(Comparison/比較):35%

E(Examination/検討):15%

A(Action/購買):10%

S(Share/共有):5%

この結果の分析から、認知率が高いのでターゲットにリーチはしている、検討した人の多くが購買にまで至っているので、正しく理解されれば購入される可能性が高い、ということがわかります。

また、認知(A)と興味(I)の間で数字が著しく下がっていることから、認知施策のメッセージがターゲットに響いていないのではないか。比較(C)から検討(E)に進む人が少ないことから、競合商品の方が商品詳細を伝えるアプローチが優れているのではないか、という解釈が可能となります。このような比較を項目比較といいます。

80%、50%というような数値が語っている客観的な情報を「Fact(事実)」といいます。このFactから「〇〇なのではないか」と解釈することを「Findings(気づき)」といいます。Factで終わらせず、Findingsまで深めることが重要です。

 

全体と部分の比較

市場(全体)での好感度(部分)を調査する、というような、全体と部分を比較する方法です。

全体と部分で比較する際は、何を全体として捉えるか、が重要です。

誰が回答していて、誰が回答していないのか

集計範囲はどうなっているのか、全体はどれになるのか

この2点を必ず確認してください。全体だと思っていた集計範囲が部分である場合、FactやFindingsが異なってしまうので注意が必要です。

 

時系列比較

時間の経過という視点から分析していくアプローチです。前年と今年、キャンペーンの前と後、などの区分でよく実施されます。

時系列比較ではノルム値を活用した分析が重要です。ノルム値とは、過去の結果の積み重ねによって策定された基準値、のことです。

ある商品のコンセプト受容性を調査し、ポジティブな回答の合計が80%だったとします。この事実だけでは、結果の良し悪しを判断することができません。そんなときに活用するのがノルム値です。

コンセプト受容性を、数年前から同じ調査項目で聴取し、結果を蓄積しており、ノルム値が60%だったとします。そうすると、80%という数字はノルム値を超えているため、非常に良い結果と判断することができます。

逆にノルム値が90%だった場合は、80%という高い数字ではあるが、基準より10%も低い、ということで悪い結果と判断することができます。

ノルム値という時系列で蓄積されたデータは、比較分析をする際に大きな価値を生み出してくれます。ですが、データの蓄積は非常に時間がかかります。比較データとして価値が出るまでに少なくとも2年は必要といわれています。利用しようと思ってすぐできるものではないので、今からコツコツと蓄積を始めるのがいいかと思います。

 

3.構成・構造を考える

商品Aに対して、戦略的に投資することが決まったとします。その場合、どんな人が購入しているのか、どのチャネル(流通経路)でよく売れているのか、購入理由はどういったものなのか、と売上構成要素を分解して分析することが重要です。

例えば、商品Aの売上構成要素が

購入層:男性が70%で、そのなかでも30代が30%で最も多い

購入理由:デザインとブランドが評価されている

という分解ができたら、男性30代の拡販を強化することにし、デザインの良さを訴求する、ブランドの世界観を表現したブースや店舗の増設、という施策が考えられます。

売上比較の後に、購入者属性や購入理由などの構成・構造を明らかにしていくことは重要です。忘れずに行いましょう。

 

4.関係性に着目

より深い分析が必要な際、それぞれの数字が与え合う関係性を確認すべきときがあります。関係性は大きく分けて3つあります。

相関関係

2つの項目間に関係があることを示すものを、相関関係といいます。たとえば「国語と英語の成績に相関関係がある」というFact(事実)が確認できたとします。

ここで(Factで)終わらせるのではなく、文法理解、読解力が重要という点が国語と英語両方に当てはまるので、成績に相関があるのだろう。とFindings(気づき)まで深めることが重要です。

因果関係

相関関係があるのに加え、Aという原因があってBという結果が起きる、という関係を因果関係といいます。因果関係が成立する条件は、

相関しており、再現性がある(偶然ではない)

見せかけの相関ではない

原因が結果より前に発生している

の3つです。課題解決で重要なのは、相関関係の裏に隠れている因果関係を発見し、ボトルネック(全体の能力や成果に影響する問題となる要因)にアプローチすることです。

単なる偶然

たまたま相関を示したものの、再現性がない関係は「単なる偶然」です。偶然を間違えて相関と捉えないように、時系比較などを駆使して注意深く確認しましょう。

 

5.分布の確認

データが様々な数値を取ることを分布するといいます。集団の特徴を分析する際には、データの分布を比較することが重要です。

左右対称で平均を中心に持ち、富士山のような形をしている曲線の分布を正規分布といいます。

それ以外には、変数同士が比例関係にある直線の分布や、一部のみ数字が極端に変化し、心電図のような形の分布などがあります。

集団の特徴を表す値はいくつもありますが、集団のデータの中心を表すものを代表値といいます。代表値には、平均値、中央値、最頻値、の3つがあります。

平均値

平均値の中にもいくつか種類があり、代表的なのは単純平均加重平均です。

単純平均とは、一般的な平均です。

加重平均とは、ウェイトを加味した平均です。例えば、

A:販売個数100個/平均単価60万円

B:販売個数50個/平均単価40万円

の場合、AとB合計の平均単価を単純平均で算出すると50万円となります。「(60+40)/2=50」これでは販売個数の違いによる重み付け反映されていません。こうした際に活用するのが加重平均です。加重平均で算出すると、

(100×60)+(50×40)/(100+50)=53.3万円となります。平均単価が3.3万円も違うとなると、無視できない数字となります。

中央値

測定値を小さい値から大きい値へと順番に並べた際に、中央に来る値を中央値といいます。

データ分布の形がなんだろうと、中央値は影響を受けません。そのため、外れ値(他の値から大きく外れた値)に強いという特徴があります。

データ数が偶数の場合は、中央前後の値の平均値が中央値となります。

最頻値

測定値をカテゴリに分けた際に、最も数の多いデータを最頻値といいます。

最頻値も中央値同様に、外れ値の影響を受けません

特定の値のみが突出して多い分布において有効となります。

 

 

以上が、分析で絶対に押さえるべき5つの視点です。5つとも重要ですが、なかでも特に重要なのが、

分析目的の明確化と、比較軸の明確化です。

有効な分析の決め手は比較にあります。

 

 

ステップ6. シンプルにわかりやすく。意思決定しやすいアウトプットの作成。

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データの分析・解釈と必ずセットで発生するのが、アウトプット作成です。アクションにつなげるためには、シンプルでわかりやすいものにすることが重要です。

アウトプット作成において重要なのは、

誰に(to Whom)、何を(What)、どのように(How)伝えるかを決め、作成作業は徹底的に効率化すること

です。特に「誰に、何を」の部分をしっかり考えましょう。

 

誰に(to Whom)

まず考えるべきは、伝える相手の種類です。

経営者、管理職、顧客、上司、部下、というような種類のうち、伝える相手はどの種類に該当するかをしっかりと考えましょう。相手の種類によって、求められる品質が異なる場合があります

相手の伝達内容に対するリテラシー、についても考える必要があります。

サッカーに関する調査報告をする際に、サッカーを熟知している相手と、見たこともない相手とでは、必要な説明が全く異なります

相手が複数おり、リテラシーにバラつきがある際は、意思決定者などのキーマンに標準を合わせて、説明を行いましょう。

 

何を(What)

考えるべきは、伝達目的、伝達項目、キーメッセージ、読後感、の4つです。

伝達項目は、プレゼンテーションやアウトプットで達成したいことです。伝達項目は、目的を達成するために必要な伝達内容を箇条書きしたものです。

キーメッセージと、読後感は特に重要です。

キーメッセージとは、「つまり〇〇は〇〇に非常に有効」といったような、アウトプット全体を通して、最も伝えたい1つのメッセージです。

読後感とは、「非常に共感しました」といったような、相手に一番感じてもらいたい気分です。

 

 

アウトプットはどうしても左脳的(論理的)アプローチに偏りがちですが、右脳的(感情的)な心を動かすキーメッセージや読後感を盛り込まないと、人を動かすアウトプットにはなりません。

頭(論理)と心(情理)、それぞれに働きかけることが大事です。

資料自体には付加価値はないので、テンプレートを利用したり、人のスライドを真似したりするなど、極力効率化を図りましょう。

 

ステップ7. これがなければ意味がない。情報収集と分析をアクションにつなげる。

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アクションや意思決定につながらないリサーチは、意味がありません。リサーチがアクションにつながらない理由には以下のようなものがあります。

 

意思決定者を巻き込めていない

担当者と意思決定者では、課題や解決の優先度が異なる場合が多々あります。そのため、担当者レベルでは十分だとしても、意思決定者レベルでは不十分な調査となってしまう場合があります。

リサーチは、聴くべき本質的な質問や選択肢が1つ2つ漏れただけで全く意味のないものになってしまいますので、課題や解決の優先度をしっかりと把握することは非常に重要です。

意思決定者はレビューに対する時間を惜しまない。リサーチ担当者は、いかに意思決定者を巻き込むかを意識する。このように関わる全ての人が積極的に関わっていく姿勢を持つことが、リサーチ成功にとって大切となります。

 

戦略仮説を立てていない

このような戦略・施策を実行すれば有効なのではないか、という仮説を、戦略仮説といいます。この戦略仮説は、調査企画段階で考えていることが重要です。

調査実施前から、実行し得る戦略仮説を考え、調査項目に落とし込む、ということを強く意識することが大切です。

 

 

以上が、リサーチ成功のための7ステップです。忘れてはならないのが、リサーチとは、

ビジネス課題を明確にし、課題解決のアクションや意思決定をするために必要な、あらゆる情報収集や分析をすること。

ということです。そのために上記の7ステップを行い、有意義なリサーチを行いましょう。

 

Point
リサーチは、必ずアクションまでつなげる。

 

 

以上が 、中野崇氏著「マーケティングリサーチとデータ分析の基本」の要約です。最後に本書の一節を引用し、この記事を締めたいと思います。

適切なリサーチで他人の経験・考え・気持ちから学び、多面的に物事を考えることができれば、間違いなくビジネスの成功確率を高めることができます。ビジネス全体がデジタル化する時代です。リサーチスキルはこれから、教養としてあらゆる職種で求められるようになると思います。

中野崇 マーケティングリサーチとデータ分析の基本

 

マーケティングリサーチとデータ分析の基本

マーケティングリサーチとデータ分析の基本